岡山県の中央部を南北に流れる旭川は、豊かな水資源を提供するとともに、歴史的には高瀬船の行き交う重要な交通路として、また今日では中心市街地に水と緑豊かなオープンスペースを提供するかけがえのない財産です。この旭川を日本一美しい川として後世に引き継ぐために、さまざまな活動が行われています。その一つが旭川アダプト・プログラムです。環境問題に対する関心が高まるなかで様々な団体がそれぞれのアプローチで環境維持活動に取り組んでいますが、その思いはみな同じ、「美しい環境を後世に残したい」ということです。旭川を美しい川として維持することは、今年、国立公園指定七十周年を迎えた瀬戸内海を美しくすることにも通じます。ここでは、旭川アダプト・プログラムに携わる方、河川を管理する方などが一堂に会し、その思いを語っていただきました。
Discussion Meeting
座談会参加者
司会・コーディネーター
岡山大学環境理工学部教授
名合 宏之さん
国土交通省中国地方整備局
岡山河川事務所長
渡部 秀之さん
岡山県土木部
河川課 副参事
松尾 茂樹さん
岡山市環境局環境保全部
環境調整課 課長
内藤 元久さん
岡山旭ライオンズクラブ
事業委員長
澤根 育生さん
平井元町町内会
会長
内田 武宏さん
M岡山毎日広告社
営業本部 部長
永末 博さん
旭川アダプト・プログラム
サポーター
吉行 史恵さん
岡山県立岡山大安寺高等学校
2年生
坂本 由佳さん
岡山県立岡山大安寺高等学校
2年生
白鳥 佳奈子さん
岡山県立岡山大安寺高等学校
2年生
竹井 久実子さん
■事業は長いサイクルで続けることが大事
名合…平成五年に岡山商工会議所が主体になり、”旭川を日本一美しい川に育てる会“を任意団体として発足しました。それを母体にして平成十三年四月にNPO法人を設立し、そのメイン事業として「旭川アドプト・プログラム」に取り組み、さまざまな活動を行っています。本日ご参加いただいている皆様はそれぞれの立場でこの事業に関わっている方々ですが、今日はご自由にご発言いただき、適宜、河川管理者、行政関係者の皆様にコメントをいただきたいと考えていますのでご協力ください。それでは、まず自己紹介を兼ねて旭川とのかかわりなどについてお話しください。
澤根…私は岡山市の生まれで、小学校の低学年まで旭川で泳いでいました。 そうしたなか、岡山城築城四〇〇年の年に岡山市の市民公募事業で採用された「旭川遠泳」に当初から関わっています。今年、八回目を開催することができました。旭川河口付近で泳ぐことができる喜びをいつも感じており、清掃活動にも毎回参加しています。遠泳にも清掃にも共通しているのは、定期的な行事は一度やめると、復活には何倍もの労力を要することです。長いサイクルで続けるという姿勢を基本に発展させていただきたいと思います。
内田…私も旭川で泳いで遊んだ年代なので思い出は数限りなくあります。家族や近所の人と一緒にシジミを採りに行ったこともありました。ある時期からシジミがいなくなり、流域の住民として情けなく思っていましたが、ここ数年で川がきれいになり、また拾えるようになりました。多くの人が遠方から採りに来てくださることをありがたく感じています。
永末…私は二十八歳の時に岡山に来ました。以来、趣味の渓流釣りやカヌーで旭川にはいろいろな思い出をつくってもらっています。旭川の源流とは知らず、新庄村の田浪キャンプ場によく出かけていました。毛無山の麓にあって、トイレは完備ですが、その他の水道施設はなく、炊事などは川の水を利用します。キャンドルナイトに近いようなキャンプができ、かれこれ二十年ぐらい前から利用しています。旭川が清流だからこその醍醐味と感謝しています。
吉行…私は御津町の旭川の近くに住んでいるのですが、最近では川のことを気に留める機会が少なくなったと思います。小さい頃は兄弟や友だちと川原へ出かけ、遊びました。今では危険視されていますが、当時は川で泳いだり、水遊びをすることはごく自然でした。その後、事故を防ぐために旭川の遊泳が禁止され、足が遠のき、今日にいたりました。平成十年には洪水がありました。その時、自然の力と川の怖さを目の当たりにし、昔遊んだ思い出がだんだん少なくなり、残念に思っています。どちらの記憶も忘れてはいけないのですが、できれば以前のように子どもの遊び場になるような旭川をもう一度取り戻したいと思いながら清掃のお手伝いをしています。
■花火、朝市、旭川には魅力がいっぱい
名合…今日は高校生の皆さんにも参加してもらっていますが、これは昨年から岡山市内の高校生で組織する「高校生会議」さんに参加してもらっているからで、今年からは「キラリ輝く国体貢献高校生ボランテイア」と名称が変わったそうですが、フレッシュな感覚で意見をお願いします。
坂本…私にとって旭川は花火大会の思い出になります。小さい頃から毎年のように出かけている恒例のイベントで、空に打ち上げられた花火はもちろんですが、旭川の水面に広がる花火のきれいさも印象的です。夏になるとこの日が待ち遠しくて、やはり夏は花火だと思います。
白鳥…私は京橋の朝市に何度か出かけたことがあります。いつも多くの人でにぎわっているのですが、川のほとりのお店を見て回るだけでも、とても楽しく感じます。朝市ができるのも川やその周辺がきちんと整備されているからで、いつまでも続くといいなと思います。
竹井…旭川の近くに住んでいるので、幼い頃からよく川原で遊んでいました。蟹や魚を捕ったり、いろいろな生き物を観察したり、楽しい思い出が沢山あります。私にとって旭川は自然と触れ合うことができる、とっておきの場所でした。
■旭川は水棲動物の宝庫
名合…年配の方には泳いだ思い出、若い人には花火や朝市が印象深いようですが、いずれも旭川の顔とでもいえる思い出でしょうか。管理者、行政サイドからコメントはありませんか。
渡部…皆さんから思い出を聞かせていただきましたが、私は、二年前、岡山に赴任してきた時「人口六十万の大都市のなかに、こんなにきれいな川が流れているんだ」という印象をもちました。データによりますと、旭川は淀川・木曽川に次いで全国で三番目に淡水魚の種類が多く、淡水魚の宝庫といわれる川なのですね。ところがどこへ行っても空き缶やペットボトルが転がっている。毎年三、四月の転勤の時期になると、引越しゴミのようなものが川周辺からいっぱい出てきます。こうした状況のなか、地域の人々が”日本一美しい旭川を後世に“と一生懸命に活動されていることをありがたいと思っています。街中に捨てたゴミは最終的に川に流れて出てきます。市街地に暮らしている人たちの結果が川に表れるのですね。ゴミもあるけど、ゴミを拾おうとする取り組みは、川に対する顔が見えて頼もしいです。こうした運動がもっと広がっていけばいいと思います。
松尾…昔から人間は川と深い関わりをもって暮らしてきました。例えば、フォークソングとか歌謡曲とかいろいろな歌がありますが、「川」を題材にした作品が多いですね。私が若い頃、好きだったのは『神田川』という歌なのですが、大安寺高校の方は、聴いたことはありますか。 (高校生 「はい」)(笑い) ご存知ということで、世代を超えて共有できた喜びを感じます。川は歌になったり、恋愛の話に登場したり、人間とはまさに切っても切れない関係と思っています。
内藤…岡山市環境調整課ではいろいろな仕事をしています。その中で、先ほど渡部所長が指摘していただいたように豊富な水棲動植物などの野生生物の保護という仕事もあります。岡山市には淡水魚だけでなく、国から「今にも絶滅しそうだ」と指定された生き物が百種以上いると言われています。そしてそれらは主に河川に棲息しています。岡山は農業都市で、農地を皆で維持してきました。水を引くための水路があり、それを皆で管理してきた。これが非常に大切なことなのです。岡山市に棲む生き物は、蒜山のような原生地に生息するものではないですから、里山や里地ということで、人間との関わりのなかで棲む生き物――たとえばホタルとかカエル、トンボといった生き物がどこにいるかというと、川や水路、水田にいるのです。最近でも岡山市内の水田にダルマガエルという大変貴重な生き物がいることがわかりました。その水田の水はどこから来ているかというと、旭川から来ているのです。その他にもアユモドキやスイゲンゼニタナゴといった貴重な生物の棲息が市内で確認されています。そのかなりの部分が旭川水系なのですね。もちろん高梁川水系、吉井川水系もありますが、今は三本の川がどこかでつながっています。水田があって、水路があって、もとに河川があるというつながりが大事なのです。